第183国会が1月28日に召集されてから、ちょうど1ヵ月が経過した本日、安倍総理の施政方針演説など、政府4演説が衆参の本会議で行われました。
安倍総理が演説の冒頭で強調したのが「強い日本」。そのほかにも「世界のフロンティア」「世界の成長センター」「世界1を目指す気概」など、「世界」という言葉が勇ましく連呼されました。
しかし、総理の目は一体、どこに向いているのだろうと、首をかしげざるを得ませんでした。「強い日本」をつくるためには「誰かに寄り掛かる心を捨て、……自ら運命を切り拓こうという意志」がなければダメだと述べました。努力して学校を卒業しても正社員としての働き口がない現実。まじめに働いても、下がる一方の賃金――このときに、「強い日本」のためには、自分で頑張らなければダメだというだけなら、政治が果たす役割などありません。
また、「世界1を目指す」手段の一つとして、「聖域なき規制改革」を挙げました。そう、小泉構造改革時代のフレーズです。あの時代に規制緩和で競争力強化をうたい、企業利益を最優先に求めた結果が、いまの深刻なデフレ不況のはずです。これでデフレ不況から脱却できるのか、本当に疑問です。
総理の企業重視の姿勢は、随所にでてきます。「日米首脳会談で『聖域なき関税撤廃』が前提でないことが確認できた」として、交渉参加に大きく踏み込んだTPP問題。責任あるエネルギー政策をつくるとして演説で明言した(規制委員会による安全確認後の)原発の再稼働――これらは、国民の安全や安心よりも、大企業や輸出産業の要求を重視しているとしか思えません。
世界1を目指すことも、日本経済を世界の成長センターにすることも悪いとは言いません。しかし、疲弊しきった国民生活に活力を与えるためには、賃上げや中小企業支援で家計の所得を増やしたり、誰もが安心して働ける雇用環境を整備する道筋を示すことこそ必要なはずです。政府の規制改革会議が、解雇規制や派遣労働の規制緩和を検討項目に挙げていることと合わせ、安倍政権は、国民生活の安心と逆の方向に進んでいるのだと思います。
最後に気になったのが憲法です。総理は「憲法審査会の議論を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深めようではありませんか」と呼びかけました。憲法審査会という国会(立法府)の機構に対し、行政府の長が「議論を促進しろ」というのは三権分立の原則を侵しかねない言動です。また、憲法99条で憲法尊重擁護義務が課せられている総理が、「改憲に向けて議論を深めよう」と、議員や国民に向かって呼びかけるのも不適切だと思います。
――いずれにせよ、これからが、今通常国会の本番です。安倍内閣の政策の問題点を追及し、働く人や生活者が社会の主人公になるための政治を実現するため、がんばります。
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